第12章 名探偵はお見通し
「太宰さん、どこに行ったんだろう?」
敦を狙っていた龍くんと必然的な再会を果たした翌日、あたしはいつものごとくふらりといなくなった太宰さんを探していた。
そこへ、あたしの携帯が着信を告げる。
誰だ、こんな大事なときに。
……国木田。
もう。
「何よ、国木田。今、忙しいの!」
「《忙しいのはこちらの方だ! 今すぐ戻って来い。探偵社がマフィアに襲撃された》」
襲撃? そういえば、龍くんたちがそんなことを言っていたっけ。
「それだけ落ち着いてるんだから、撃退できたんでしょ? わざわざあたしが行かなくてもいいじゃない」
「《片づけがあるだろう! あれもこれもそれも、やることが多すぎて人手が足らん。どうせ、太宰も一緒だろう。連れて社に戻れ!》」
「その太宰さんを探すのに忙しいって言ってるの!」
「《何、太宰が行方不明だと⁉ あの迷惑人間が! どうせどこかで入水でもしているんだろう。分かった。こちらは任せて、そのまま太宰の捜索を続けろ》」
「国木田に言われるまでもないよーだ!」
「《お前、何だその返事は……ッ》」
電話越しに怒鳴る国木田の言葉をブツッと切ってやる。
入水……入水か……。
あたしは川を探すことにした。
* * *
「太宰さん、いたーっ!」
川を捜索していると、あたしはようやく目当ての人物を見つけた。
川辺には敦の姿があり、彼の話によれば、証拠が流れていないか網を張っていたところ、引っかかったらしい。
国木田の言う通り、入水しようとしていたのだ……と思ったけど、それとは違うみたい。
前回、樋口に心中を申し込んだことをきっかけに、『一人で自殺』よりも『美人と心中』に目覚めたようで……今回は単に川を流れていただけ、とのこと。
その川原には、太宰さんと敦だけでなく、大勢の警察官に混ざって乱歩さんもいた。
「何? 殺人事件?」
現場に入り、遺体を確認する。
殺されたのは女性刑事。
セミロングの黒髪、服装はスーツとかではなく私服で、化粧はしていない。左腕に高そうな女性ものの腕時計をしている。