第11章 元マフィアの二人
「君は充分、『良い人間』だ。私が保証しよう」
嘘偽りない太宰さんの瞳に、あたしは込み上げてくる涙を必死で堪えた。
「泣くのかい?」
悪戯っぽく言われて、あたしは太宰さんの胸にしがみつく。
「泣かないもん!」
そう言うと、太宰さんは「はいはい」と苦笑した。
あたしはもう、昔のあたしじゃない。
親に虐げられたあたしは死んで。
マフィアで人殺しをしていたあたしもいない。
あたしは『武装探偵社』の一隅。
あたしの異能は、正義のために振るわれるもの。
「さて、帰ろうか?」
「うん」
早く与謝野先生に診せないと、と言う太宰さんに、あたしは頷いた。