第39章 光を夢見る少女
異能特務課が所有する超小型強襲機『夜烏(よがらす)』。
そのヘリコプターを谷崎が操縦し、敦を白鯨へ潜入させる作戦。
正直に言えば、あたしが行きたかった。
乱歩さんが手に入れた資料によれば、組合は地上への総攻撃を計画しているらしい。
その手薄な空中要塞・白鯨に潜入し、コントロールを奪う。
単身で潜入となれば、人選は自ずと限られてくる。
どんな不測の事態にも対応できる戦闘系の異能を持つ人間。
汎用が利く『血染櫻』か、スピードと耐久力に優れる『月下獣』。
そして、太宰さんは迷わず後者を選んだ。
敦は白鯨に捕らわれていたことで土地勘がある。
最悪、失敗したとしても、殺されずに捕縛されるだけの可能性も高い。
納得できないあたしと戸惑う敦に、太宰さんはそう説明した。
敦以上の適任者はいないのだと。
* * *
あたしと太宰さんは、軍警の操縦室にいた。
鏡花が乗っている無人機を遠隔操作できる部屋だ。
何に使うか分からない機械で埋め尽くされた薄暗い部屋の入口には、見張りなのか、屈強な黒服の男たちが立っていた。
白鯨は、定期輸送ヘリを格納する一三〇秒間だけ、空域センサーが切れる。
その隙に、谷崎の『細雪』でヘリごと姿を隠して接近し、敦が白鯨に潜り込むのだ。
『潜入に成功しました』
無線通信からの敦の音声に、太宰さんはすかさず中の様子を尋ねる。
警戒しながら先へ進む敦が、怪訝な声で答えた。
『静かです。誰もいません……妙です。みんなどこに……』
ガチャとどこかの扉を開けた音に続き、一拍置いて、緊張した空気が伝わった。誰かいたのだろうか。
太宰さんを見れば、真剣な表情で、静かに音声の向こう側を探っていた。