第38章 彼女に遺された言葉
「……なら、私の為なら?」
そんなこと決まってる。
考えるまでもないことだ。
「太宰さんが望むもの総て」
探偵社も、マフィアも、自分の身体も命も……誇りも尊厳も、常識も。
そう答えれば、太宰さんはあたしをギュッと抱きしめた。
自分の身体を包む温もりと、慣れ親しんだ匂いに、あたしの身体は反射的に力を抜く。
「どうしたの、太宰さん? 寂しい?」
「うん。だから……今はこのままでいて」
どうして、寂しいの?
その意味も分からないまま、あたしは太宰さんの背中に手を伸ばした。