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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第38章 彼女に遺された言葉


 翌日、ほんの数時間の睡眠を取って出社すると、乱歩さんが組合の構成員を撃破し、ある情報を持って帰って来ていた。

 何でも、組合の設計者長(マスターアーキテクト)であるエドガー・アラン・ポオとの推理勝負に勝ったらしい。

 そして、そこから持ち帰った情報とは、組合の拠点にして無敵の空中要塞『白鯨(モビーディック)』の、死角及び攻略法が書かれた機密書類だった。

* * *

 会議室では、乱歩さんが菓子を食べ、ジュースを飲み、椅子にはだらしなく腰をかけている。
 そこから二つ席を空けて、太宰さんがコーヒーを飲みながら、情報の書かれた書類に目を通し、あたしはその隣でうつらうつら。

「すごい情報ですね。値(あたい)千金(せんきん)だ」

「好きに使え。僕は興味ない」

 そう言いながら、乱歩さんは菓子に手を伸ばす。

 瞼が重くなってきたところで、あたしはハッと目を覚まし、苦手なコーヒーを飲んで、どうにか目を開いた。
 そんなあたしの頭を太宰さんは撫でてくれるけど、余計に眠たくなるから止めて欲しい。

「これを使って組合の背骨を一撃でへし折るとすると……潜入から爆弾?」

「はぁ? 無理だろ。通信から狙撃で着水して失敗だな」

 何かの暗号だろうか。
 全く内容が理解できないのは、きっと頭が寝ているからだと思う。

 太宰さんは頭の中でシミュレーションをしているのか、数秒黙り、「本当だ」と頷いた。

「じゃあ、特務課突入から賢治君だと?」

「無理。地上戦になって痛み分け、延長戦」

「あぁ……確かに。となると、敦君か」

「ふぅん。ま、『細雪』を使えば、悪くない」

 いつの間にいたのか、ちょうど名前が出たタイミングで、敦が会議室の扉を開ける。
 値千金の書類で折った紙飛行機を作った太宰さんが、それを敦に向けて飛ばした。
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