第6章 黒獣を従える少年
あたしがポートマフィアに入って……太宰さんに拾われて、4年が経ち、あたしは13歳になった。
太宰さんも最年少で五大幹部に抜擢されて、今まで以上に忙しい。
あたしは、太宰さんにたくさんのことを教わって、少しだけ賢くなったと思う。
掛け算とか割り算もできるようになって、読み書きも問題なくやれるようになった。報告書だって1人で書ける。
異能も、上手く使えるようになった。
太宰さんの訓練はすごく辛いし痛いけど、それでも、少しでも太宰さんの役に立てるなら、いくらだって我慢できる。
それに、太宰さんはすごく頭が良いから、いつもびっくりするような使い方を考えてくれた。
この前は、標的にこっそりあたしの血を混ぜた飲み物を飲ませて、その血を標的の体内で爆発させて殺す……とか。
実際にやってみたけど、死体がグロテスクになるから、できればあまり使いたくない。
そう言ったら、太宰さんは大爆笑していた。
太宰さんと過ごす時間は、好き。
これから先何があっても、きっとあたしは太宰さんと一緒にいるんだと思う。
ううん。
何があっても、太宰さんと一緒にいたい。
* * *
「太宰さーん!」
ドーンッという効果音つきで、あたしは太宰さんに抱きついた。
すると太宰さんは少しだけびっくりして、抱きついてきたのがあたしだって分かると、頭を優しく撫でてくれる。
「お帰り、詞織。首領(ボス)への報告は済んだのかい?」
「さっき中也と行ってきた」
あたしは中也と東北へ、敵対勢力を潰しに行っていた。
1週間の予定だったけど、敵があんまり弱いから3日で帰って来られた。
「そうか……」
そう言った太宰さんの声が少し冷たくて、「どうかした?」と聞いてみると、「何でもないよ」と返ってくる。
「よぉ、糞(クソ)太宰」
遅れて中也が来た。
「やぁ、中也。久しぶりだね」
2人は仲が悪い。
でも、『双黒(そうこく)』と呼ばれるくらいには仲が良いんだとあたしは思っている。
だって、2人は相棒だし、お互いにそう認識しているんだもんね。