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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第28章 少女の心が震える理由


「太宰、説明を」

 指名された太宰さんは、「はぁい」と手を上げて前に出た。

「組合は資金力に、マフィアは兵の頭数に優れます。正面から戦えば、探偵社といえども脳天が弾け飛ぶ」

 そこで、と彼は続けた。

「我々は人員を守勢と攻勢に分割し、奇襲戦法で姑息に抗います」

 守勢の要は、拠点である旧晩香堂で与謝野先生を守ること。
 与謝野先生の異能力があれば、死なない限りは治癒できる。
 嬉しいかどうかは別にして、とおどけた調子で太宰さんが言うと、経験者全員が青い顔をした。
 賢治だけが笑っているけれども、「いや、笑えないよ……」と敦の目が訴えている。

「攻勢は2組に分割。谷崎君の隠密能力と、私の異能無効化で、敵の横合いを叩く」

 探偵社にとってこの戦いの最大のポイントは、この拠点を隠匿すること。
 敵の異能力者が総出でなだれ込んで来れば、守勢が保たない。
 社長が立ち上がり、声を張り上げた。

「生き残るのは1組織のみだ! 戦う他に活路はない!」

 ――3組織、異能力戦争だ――!

 社長の言葉に空気が震える。
 あたしはこの戦争の先を思って心が震えた。

 戦うことへの不安、そして、歓喜。
 まだ見ぬ強敵を前に、あたしの心は、確かに歓びに震える。

 それがまた恐ろしくて、あたしはこっそりと唇を噛みながら、その感情を押し込んだ。
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