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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第5章 血を操る少女


 翌朝、簡単に食事を済ませた私たちは、ポートマフィアが拠点にしているビルを訪れた。
 詞織には、私の衣装に合わせて、黒いワンピースを着せている。
 もちろん、私が見立てた。
 サイズも丁度良いようで、詞織によく似合っている。
 私は詞織の手を引いて、首領(ボス)の部屋の前に立った。
 ドアをノックして名乗れば、中へ入るよう促される。

「失礼します」

 ドアを開けた先には首領である森鴎外が執務机に向かって座っており、その隣の床では、金色の髪と碧い瞳を持つ少女エリスちゃんがクレヨンで絵を描いていた。

「やぁ、太宰君」

 首領が私に声を掛けると、詞織は私の後ろへ隠れる。

「先ずは、例の組織について聞かせてくれるかな?」

「はい。あの組織は小さい割に構成員が多いので、夜に奇襲をかけました。構成員を全滅させることに成功しましたが、一部、一般宅へ報復に行っており……」

「報復?」

「えぇ。ボスの愛人と知らずに手を出した男がいたようで、その報復に駆り出されていました」

「それで?」

「男には妻と娘がいましたが、娘が異能力者だったようで、私が駆けつけたときには男とその妻、組織の刺客が十一名、全員死んでいました。現在、他に残党がいないか調べています」

「なるほど、ご苦労だったね。……それで、その男の娘で、異能者だったというのは君かな?」

 突然自分に話が振られ、詞織はますます私の後ろへ隠れた。そんな少女を前へやりながら、挨拶をするように促す。

「首領に自己紹介をするんだ」

 詞織の揺れる紅い瞳が泳ぎ、やがて首領へと顔を向けた。
 そんな詞織の様子を、首領は急かすことなく待つ。相変わらず幼女に甘い。

「櫻城詞織……です」

 私が身を屈めて耳打ちしてやると、それと同じ台詞を繰り返す。

「やぁ、初めまして。私の名は森鴎外。君のことは太宰君から聞いているよ」

 首領が自己紹介すると、興味を持ったらしいエリスちゃんが詞織のところまでやって来た。

「瞳(め)、紅いのね」

「っ⁉」

「あなたの瞳、この間リンタロウが買ってくれたワンピースと同じくらい紅いわ」

 突然話しかけられて、ますます私の後ろへ隠れてしまう詞織。
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