第23章 少女が『強さ』を求めるのは
モンゴメリを退け、賢治やナオちゃんを取り戻したあたしたちは、一度探偵社に戻った。
「太宰さん!」
会議を終えていたのか。
太宰さんを見つけ、あたしは思わずその身体に抱きつく。
「おかえり、詞織」
けれど、太宰さんの顔を見て、抱きついていても、身体の震えは止まらなかった。
「詞織?」
不審に思った太宰さんは、あたしの名前を呼ぶ。
あたしは震える唇をどうにか動かした。
「首領が……」
それだけを口にすると、あたしを抱きしめる太宰さんがピクッと反応を示す。
「与謝野先生。医務室を借りてもいいですか? 詞織の体調が良くないみたいで」
ボブカットに金色の蝶を飾る探偵社の専属医に、太宰さんは声を掛けた。
「それは別に構わないけど……大丈夫かい? アタシが診ようか?」
けれど太宰さんは、「少し休めば大丈夫です」と、それを断った。
「何かあれば呼ぶので」
そう言いながら、太宰さんはあたしを横抱きにする。
「きゃぁ……っ! だ、太宰さん⁉ あたし、別に……っ」
休む必要なんかない、と言おうとしたけど、太宰さんはそれを口で塞いだ。
「ん……⁉」
突然の口づけに驚いて何も言えないでいると、唇を離した彼は、耳元で低く囁いた。
「黙って」
ビクッと身体が震えたのは、それを『命令』だと判断したから。
「はい、太宰さん」
太宰さんの首に腕を絡め、あたしは大人しく医務室へ運ばれることにした。
* * *
必要ないはずなのに、あたしはベッドに横たえられた。
「太宰さん。あたし別に、体調は悪くない」
そう抗議をするけど、彼は「大人しくしてい給え」と、あたしに毛布をかける。
「むぅ……」
結局、あたしは太宰さんには逆らえない。
もしかしたら、何かしら意味のある行動かもしれないと、あたしはそれに従うことにした。
何だか、眠くなってきた。
「それで? 何があったか聞かせてくれるかな?」
眠気が一瞬で吹き飛ぶ。
何から話せばいいのか分からず。
話を要約することもできず。
あたしは起こったことをそのまま話した。