第20章 彼と少女の恋愛事情
朝、カーテンの隙間から差し込む光で、私の意識は覚醒した。
まだぼんやりとしていて、目を開けることはしていない。
暗闇の中で、私は何か柔らかいものを抱いていた。
慣れた柔らかさと匂いに、私はそれが何なのかを理解する。
理解して、抱きしめる腕にそっと力を入れた。
ゆっくりと瞼を持ち上げると、私の腕の中で少女が眠っていた。
規則正しい呼吸、時おり震える瞼が可愛らしい。
自分を慕ってくれる少女への想いが恋愛感情に変わる。
それはおかしなことだろうか?
自分で育てて、どこへ行くにも一緒で、同じ空間で生活して、その成長を目の前で見てきた。
『好き』の意味が恋愛へと変わり、執着へと変わり、独占したいと思うのは、私はおかしなことだと思わない。
私が詞織への想いを自覚して抱いてきた女性は、全て彼女の代わりだった。
中也は悪趣味だと呆れていたが、私にはそうするしかなかったのだ。
当時の詞織は年端もいかない少女で、肌を重ねるには幼すぎたのだから。
否、それは言い訳か。
たとえ幼い少女だろうが、力でねじ伏せて、無理やり関係を強いることなんて容易い。
そうしなかったのは、単に私が臆病だっただけだ。
ただ、あの無垢な瞳で見つめられると、一線を越えるということができなかった。
だから、別の女性に彼女を求めた。
私が選ぶ相手は決まって、黒く長い髪を持った細身の女性。
けれど、誰1人として詞織と同じ紅い宝石のような瞳は持たず、誰1人として詞織と同じ声は持たず……誰1人として詞織ではなかった。
私は彼女たちに目隠しをさせて瞳を隠し、口を布で縛って声を殺した。
それでも、違うと思ってしまえば、全くの別人で、詞織を抱いていると錯覚できたことは一度もない。
だからか、行為を終えた後は二度と会うこともなかった。
中には執念深くつきまとってくる女性もいるが、そんな面倒な相手は適当に脅してやれば黙る。
私は自分が今までしてきたことを思い返し、苦笑しながら詞織の髪を撫でた。
さらさらと指通りのいい黒絹の髪は、私が求めた感触だった。
一糸纏わぬ少女の身体には、たくさんの傷が刻まれている。
マフィアに捕らわれた私を助けようと、中也に挑んだときに負ったものだ。