第19章 少女の「好き」と彼の「好き」
息を吐く暇もないままに、ただ求められるままに、あたしは呼吸を奪われ続けた。
送られてくる太宰さんの唾液を飲み込み、同時に舌を吸われ、あたしの身体から力が抜ける。
どれほどの間そうしていただろうか。
その時間は1秒にも、1分にも、1時間にも思えた。
自分がされている行為を理解できないまま、あたしはその行為を受け止める。
ようやく解放されると、あたしと太宰さんの舌が細い糸で繋がった。
その糸がプツリと切れるどこか卑猥な光景に顔を赤くしながら、あたしはその場に崩れ落ちる。
それを寸でのところで太宰さんが支えてくれた。
「このくらいで参っていては駄目だよ、詞織?」
太宰さんを見上げる。
そう言って笑う太宰さんの顔は、美しくて艶やかだった。