第15章 鏡の襲撃者
会議は無事に終わった。
いや、無事と言うのは少し違うかもしれない。
僕と詞織さんは、会議が行われるビルへ侵入しようとする不審者を捕らえたし、会議へ乱入しようとする輩をSPの二人が捕らえ、それぞれ市警に引き渡した。
正直、なぜこれほどまでに元議員が狙われるのかは分からないが、引退したとはいえ、彼も未だに国会へ強い影響力を持っている。
また、近いうちに開かれる国会が、国の政治に大きな影響をもたらすらしい。
その影響がどれほどのものかは分からないが、それを阻止したい人間も少なくないということだろう。
彼の発言一つでどれほどの影響があるのかは、当然僕には分からない。
それはたぶん、詞織さんも同じだと思う……けど。
前を歩く詞織さんをちらりと見ると、大きな欠伸をしながら「太宰さんに会いたい」とため息を吐いていた。
「ねぇ、詞織ちゃん。ケータイ教えてよ」
「イヤ」
「休日、どっか遊びに行かない?」
「行かない」
「チョコレートの美味しい店を知ってるんだけどなぁ」
「キョーミない」
「チョコ、好きじゃないの?」
「チョコは好き。でも、美味しいチョコにキョーミない」
どういうわけか、錦戸さんがやたらと詞織さんにアプローチをしている。
かなり一方通行だけど。
「あの、錦戸さん、どうしたんですか?」
「詞織嬢を恋人にしたいらしい。さっき、現在の恋人に別れを告げていた」
「えぇ⁉︎」
「まぁ、アイツの女癖の悪さは今に始まったことじゃないがな。もともと気の多いヤツだ」
それはちょっと納得……じゃなくて!
「だ、だったら詞織さんが危ないんじゃ……」
「気にするな。詞織嬢の性格からして、錦戸になびくような人間じゃないだろう。仮に錦戸が変な気を起こして彼女を襲うようなことになっても、返り討ちに遭うだけだ」
た、確かに。
むしろ危ないのは錦戸さんの方かも。
そんなやり取りをしている間に駅へ着いた。
元議員は「やっと終わりか」と零す。
今日一日で何度命を狙われたか知れないが、ふてぶてしい態度は相変わらず。