第16章 実力
「ふっ…!」
火神がレイアップシュートを決めた。
「よーっし!14点目!」
「あの…今はもう少し手を抜いてください…。考えまとめるどころじゃないです…。」
「やってるよ軽く。お前弱すぎ。」
火神が振り向き、そう言うと、黒子は火神を見上げた。ニヤリと笑みを浮かべると、火神が話し始めた。
「そういや、初めてやった時もこんなんだったな。その後、正体を知ったときは、正直たまげた。しかも…。」
*
「僕は影だ。君という光の影として、僕も君を日本一にする。」
*
「なぁ、あん時から気になってたことが1つある。なんで俺を選んだんだ?」
「…すみません。僕は、謝らなくちゃいけません。僕は嘘をついてました。」
「…」
「僕は中学時代、シックスマンとしてユニフォームを貰ってました。」
「知ってるよ。キセキの世代の切り札だったんだろ?」
「それは少し違います。確かに信用されていたかもしれません。けど、信頼されてはいませんでした。…いえ、もっと正確に言えば、信頼されなくなっていったんです。僕は1年の時はまだ、なんの取り柄もないただの選手でした。シックスマンとしてベンチ入りしたのは、2年からです。」
「…」
「その頃はまだ、信頼されていた……と思います。けど、青峰君のようにみんなの才能が開花していくと、信頼は薄れていきました。なぜなら、彼らキセキの世代が最も信じるのは、自分自身になっていったからです。仮に残り数秒で1点差のような大事な場面では、パスはきません。彼らが自分で決めます。」
「…」
「本当は、火神君でなくても良かったんです。ただ、キセキの世代に僕のバスケを、火神君を利用して認めさせようとしただけなんです。」
「……ったく、何を言い出すかと思えば、そんなこったろうと思ったよ。」
「!…」
今度は火神が口を開いた。