第16章 実力
火神がダンクを打った。
第4クォーター、残り9分12秒。28対30で誠凛が負けていた。
「…」(大我君…。)
黒子の方に視線すら向いていないのだ。
ビーッ!試合が終了した。
「よっしゃあ!」
「やったぁ!」
「勝ったぜ!」
「凄いなぁ俺達。」
「勝てたぜ!」
結果は43対41で誠凛の勝利。
「お疲れ様、テツ君。」
私はタオルを渡しに行った。
「…ありがとう…ございます…。」
「…?」
火神に言われたことを気にしているのか、遠くを見つめていた。
「…」
練習試合が終わったあと、私は久しぶりに1人で帰った。
「あ、おかえりなさい。そうだ、俊太、バスケやってから帰ってくるって。いつものバスケットコートにいるって。」
「…行ってくる。」
「え…あ、うん。気をつけてね?」
「うん。」
家に帰り、私は制服から着替えると、すぐにバスケットコートに向かった。
「よっ…!っと…。」
「お兄ちゃん。」
「お?おぉ、おかえり。何?どした?」
「…今、バスケ楽しい?」
「は?あ…うん。楽しいけど…なんで?」
「……わからない…。」
「は?どしたお前。」
俊太はバスケをしていた手を止め、私の前に来てくれた。
「また悩み事?」
「…見てたんでしょ?桐皇学園との試合。」
「お、おう。でも後半からな?青峰、すげぇ開花してたな。」
「…手も足も出なかった。大我君ですら止められなかったのに、どうすればいいのかわからなくて…。」