第16章 実力
「監督、これどういうつもり?」
ベンチにいた伊月が聞いた。
「アイツがどうしてもねぇ、1年生の試合も見たい。って。」
「…」
「木吉、なんだよいったい。」
「ん~?」
*
「明日から3日連続、練習試合を組んだわ!」
監督が言っていた。
「練習試合?夏休み直前になんでまた…。」
「今のみんなの課題を、より明確にするためにね。ふふっ!そして夏休みは楽しくみっちり猛練習ってわけよ!」
『あ…あぁ…。』
「なぁリコ。1つ、頼みがあんだけど。」
「ん?」
*
「俺にはわかる。木吉の考えが。」
小金井がそう言うと、皆の視線が小金井に集まった。
『え?』
「この試合多分負けるでしょ?」
「うん。」
「最近火神はプレーが自己中になってる。」
「うん。」
「黒子。」
「!…」
「もう俺にパスはしなくていい。」
「え…。」
「え…。」(青峰君の時と同じ…。)
彼は今、バスケを楽しんでいる。でも、それは1人で。皆ではなく、1人で楽しんでいるのだ。
「けどそんなんじゃ勝てない。だからわざと負けさせて、1人強いだけじゃ勝てないことを教えるつもりだった。」
「なるほど…!」
「あれ!?」
「すげぇなコガ!」
「え…いやぁ…だってさ…。」
「まぁ、なくはないけど…アイツって、そういうの言わなきゃ気づかないほどバカなのかな。迷いは悩みは、感じなかったけどな俺には。むしろ何かに気づいてほしいとしたら、彼の方だよ。」
そう言い、木吉は黒子を見つめた。