第12章 秀徳と誠凛
「…高尾君って人…凄いね…。コート全体が見えてるみたい…。」
「気づいていたのか?」
「うん。試合の最中、いろんな人にパスを出してたし…。パスの出し方も凄く上手かった。」
「…菜月。お前にはやはり観察力がある。」
「ん?あ、ありがとう…?」
「…やはりお前は、ウチに来るべきだった。」
「黄瀬君にも言われた…。」
「それほど、お前は俺達…キセキの世代にとって、必要不可欠の存在だったというわけだ。」
そう言われ、私は微笑んだ。
「そう言ってもらえると、凄く嬉しいよ。」
「…」
緑間は俯いた。
しばらく無言だった。そして、私がちょうどおしるこを飲み終わった時だった。ポケットに入っていた携帯が鳴った。
「!…ゴメン…。」
「あぁ…。」
携帯の画面を見ると、黒子からだった。
「もしもし?」
「菜月さん。今どこにいるんですか?」
「え…?」
「今、皆で探しているんです。でも見つけられなくて…。」
「あっ…そうだったの…!?ゴメン!すぐ行く。どこにいる?」
「今、ちょうど入口にいるんです。」
「わかった、すぐ行く。」
「待ってます。」
すると、電話が切れた。
「…ゴメン、もう行かないと。話、聞けなかったね…。」
「別にかまわないのだよ。」
「うん…でもゴメンね…。また話そう?じゃあね。」
「…菜月。」
「ん?」
私は振り向いた。
「……いや、なんでもないのだよ。」
「…?じゃあ、またね。」
手を振り、私は入口へと向かった。