第11章 お父さん
「意味がわからないのだよ。バスケに楽しいも楽しくないもあるか。あるはずないのだよ。」
「緑間君にも、いつかわかるよ。」
私は木の葉を見上げて言った。
「きっといつか…戻ってくれる…。」
「!…」
風が吹いた。髪が揺れた。
「綺麗……なのだよ…。」
「え…?」
「!…なんでもないのだよ。」
「お~い!真ちゃん!何してんだよ!こんなとこにいた!」
自転車付きのリアカーをこいで、こちらに向かってくる人。黒髪の人だった。同じ制服で、呼び方も独特だから、同じ高校で、仲が良い…はず…。
「はぁ…はぁ…ったく…急にどっか行くんだから…って…誰…?」
「お前は知らなくていいのだよ。いずれ試合で会う。まあ、わからんがな。」
「…」
「え~?いいじゃん、教えてよ。俺、高尾和成。君は?」
「佐野…菜月…。」
「へ~!菜月ちゃんかぁ!あ、誠凛のマネの子?」
「あ…は、はい…。」
「そっかそっか!どおりで見たことあると思った!」
「おい高尾。」
「ははっ!ゴメンって。ウチのエース様、大変っしょ?」
「え…そ、そんなこと…。」
「高尾。」
「へーへー!じゃあ、またね、菜月ちゃん!」
緑間は後ろに乗り、高尾は片手で私に手を振りながら、自転車をこいだ。