第10章 審判
“カズくんね。
俺の名前はトモ。
よかったら今からちょっと出てこれない?
暇なら俺に付き合ってよ”
何も考えずに、言われるがまま待ち合わせの場所に向かった
もうこの家には戻れないかもしれないと
パソコンの検索履歴からゲイサイトのURLは削除しておいた
『カズくんだよね?』
声をかけてきたのはハーフのような顔立ちの長身の男の人で
モデルみたいにスタイルも良くて
もっと野蛮そうな人とか危なそうな人を想像してたから意外だった
『夕方までにはちゃんと返すからさ。 ね?』
真っ赤なスポーツカーの助手席のドアを開けてくれて
俺はそこに乗り込んだ
『良かったよ、カズくんが可愛らしい子で』
でもやっぱり目的はそっち…
そりゃそうだよ
それも自ら望んだ事じゃないか
車はゆっくりと走り出した
これから俺はどうなってしまうんだろう
だけど後悔なんてしない
どうにでもなればいい ―――――
『…ここ、ですか…?』
トモさんに連れてこられたのは
女子中高生で賑わう原宿のクレープ屋
『一度来てみたかったんだよねぇ
俺一人じゃ絶対入れないし。
あっ。設定は中性的で可愛い弟と、そんな弟のワガママも“しょうがねぇなぁ〜”とか言って結局受け入れちゃう年の離れたブラコンの兄、なんてどう?』
クレープなんて食べに来た訳じゃないのに
気付けばトモさんの提案に
ぎこちなく頷いている俺がいた