第10章 審判
人目を憚りながら生きる事に慣れすぎて
そんな自分への苛立ちを感じ始めたのは
通信制の高校に進学して直ぐの頃だった
ナニ、ボンヤリ生キテンダヨ
オ前モ苦シメヨ、カズナリ
頭の中でもう一人の俺の声が聞こえる
奈落の底まで堕ちてしまえと囁いて
そして悪魔の様に微笑うんだ
悪魔の声は毎夜俺の耳元を掠めた
それが幻聴であると気付く事もないまま
真っ暗な部屋で一人
無心でキーボードを叩いた
アクセスしたのは無法地帯のゲイサイト
そこにカキコミをしたんだ
“167/52/16。未経験です。
僕をメチャクチャに壊してください”
誰でも良かった
殺されても良かった
寧ろ、殺してほしかった
フリーアドレスには山のようなメールが届いた
その中で
“君、名前は?”
たった一言そうメールをくれた人がいた
他人との接触を避け、智として生きてきた俺が
初めて自分の名前を聞かれた
“カズ”
そう打ち込んで送信した時
何故だろう
それまで何も感じなかった心に何かが押し寄せてきて
俺は声を殺して 泣いたんだ