第10章 審判
『何、言って…』
『良かったねぇ? 俺らがノンケで』
コイツらは何をしようとしてたんだ
兄さんはどこに行ったんだ
探しに行かなきゃ、
そう思って駆け出そうとしたその刹那
『おっと。邪魔しに行かれちゃ困るんだよっ…!』
急速に腕を取られ
腹を一発殴られて
俺は…その場に崩れ落ちた
もっともっと殴られ、蹴られたような気もするけど
そこから先はよく覚えていない
気付いたら…病院のベッドの上で
意識はあるのに身体は動かず、目を開けることも出来なくて
心の中で何度も兄さんの名前を叫んだんだ
母さんのむせび泣く声が静かな病室内に響く
『智を返してよ…!』
その言葉で
兄さんは俺一人遺して
遠い場所へ逝ってしまったのだと悟った
『どうして智なのよ…!
あの子を返して! 返してよ…!』
『よさないか、和也に聞こえるだろ!』
『そもそも…!
全部この子のせいだわ!
和也が智を殺したのよ!』
俺ガ、兄サンヲ殺シタ
『よせと言ってるんだ!』
どうして俺は生き残っているんだろう
『どうして…!』
どうして、俺は…
『かぁ…さん……』
『和也! 目を覚ましたのか?!
先生! 和也が…!』
『父さ…ん……』
『ご自分のお名前はわかりますか?』
駆け付けた医者に問われて
俺は小さく頷いた
『大野…… 智…』