第10章 審判
『なんかもう疲れちゃったよ…』
波音に掻き消されそうな小さな声で
兄さんがポツリと呟いた
『じゃあもう帰ろう?
これ以上遅くなると母さんまたヒス起こすよ』
俺は立ち上がり、兄さんに手を差し出した
『ずっと居てぇな、此処に…』
『馬鹿なこと言ってないで、ホラ』
『…』
『じゃあもう知らないからね?
俺、行くよ?』
そう言えば
“待ってよ、カズ”って
追いかけてくると思ったんだ
数メートル歩いて振り返ると
兄さんはまだ同じ場所で海を見つめていて
『…ったく、』
子供っぽいことしてんなよ、って
俺もムカついて
兄さんを無視してまた砂浜を歩き出した
『ねぇ、君、一人?』
いかにもチャラい感じの三人組の男が
俺の行く手を塞いだ
『いえ…、』
『なんだ、男かよ
しかもガキじゃん』
後ろを振り返ると、さっきまで兄さんが座っていた砂浜には人影は無くて
『兄さん…?』
『へぇ… アイツも男だったんだ?』
『えっ…?』
『君のオニイサンはね、』
グッと顔を近付けられて
思わず顔を顰めて身を捩った
『今頃俺らの仲間とイイコトして楽しんでると思うよ?』