第8章 死神
「ごめんね、そんな風に思ってくれてたなんて想像もしてなくて、」
月夜に照らされた相葉さんの顔が近い
「俺、サイテーだね
同僚にも言われたんだ
自分のモノサシで相手の気持ちを測るな、って」
おでこをコツン、とぶつけて
息がかかるほどの距離で
「ホントに嬉しかった
さっきのカズくんの言葉」
あっ…
相葉さん、笑ってる
「俺、も…」
「…うん?」
「俺も、今、嬉しいんだと思う
…この辺、ポカポカしてるし、」
胸に手を当てると
なんだかあったかい
「俺はめっちゃドキドキしてるよ」
ほら、って
胸に当てていた手を相葉さんの方に移されて
「…ホントだ。鼓動がめっちゃ早い」
「でしょ」
二人して ふふっ。って笑った
ジーンズのポケットから、スマホのバイブの振音が聞こえる
「10分前だね…」
「うん…」
「戻らなきゃだね」
「うん…」
離れたくない。
もっと一緒に居たい。
そう思った
「相葉さん… 雅紀さん、」
「初めて名前で呼んでくれた
でもマサキさんってなんか変な感じ」
「じゃあ…まーくん、とかは…?」
「それがいいな。
昔から知ってるみたいで」
誰かのことをそんな風にあだ名で呼ぶのは初めてだ
「まーくん、」
「…っ、はい、」
「ふふっ。 まーくん。」
「カズくん…」
まーくんの唇が
ゆっくりと俺に近付いた