第7章 月
カズくんは…心が壊れてしまった母親の為に
自分を捨てて智さんを演じ続けてるのか
今でも…?
事故から10年も経つのに…?
現実の生活では自分でない自分で
仕事では…デリバリーホストとしてなら、自分のままで居られるんだ
だから源氏名じゃなくて、本名で…
「雅紀さ、
あんま深入りすんなよ?」
「わかってる…」
「客とホストの関係だって事、忘れんなよ?」
「わかってるって…」
「なら良いけど、」
翔ちゃんの言いたい事は想像が付く
俺になんかどうする事も出来ないけど
どうにかならないのかと思ってしまうのは
性分なのかな
「なんでウリ専なんかやってんだろ…」
「風間まで首突っ込むなって」
「智さんと何か関係あんのかな、って」
「なんだよそれ」
「事故って何なんですかね…?」
「よせよ。詮索した所でお前らには関係ないだろ?」
風間だって気になってるんだ
そりゃそうだよ
子供の頃、二人並んだ笑顔の写真が三枚もあるんだから
友達だったかもしれないんだから
「わかってると思うけど
マジでやめとけよ?」
翔ちゃんが強い視線で
風間を牽制した