第6章 塔
「…体調悪いの?」
会って三秒で気付かれた
平静を装ってるつもりだったんだけどな
異常に疲れてるなんて、その理由は明らかだから
悟られたくなかったのに
「…今日は辞めとく?」
心配そうに俺の顔を覗き込む相葉さんに
「大丈夫っ…! 楽しみにしてたから、」
その言葉に嘘はないけど
この状態でバットを振れる自信も無い
「バッティングセンターはまた今度にしようよ
今日は…」
「…やだ、」
折角会えたのにもうバイバイなんて嫌だ
他の客なら、キャンセル料貰って帰れればラッキーだと思うのに
「…嫌です、」
目の前の相葉さんのTシャツの裾をギュッと掴んだ
「じゃあ…あそこ!今日はあそこに行こう?
バッティングは次の機会で」
相葉さんが指差したその先には
電球が沢山付いた看板のカラオケ屋
座れるトコなら…2時間居られそうだ
「…うん、ホントごめんなさい」
「じゃあ、行こっか」
相葉さんがTシャツを握る俺の手をそっと解く
初めて触れた…
あったかい相葉さんの手
「…何?」
「乗って!」
徐に背中を向けてしゃがみ込んだ相葉さんが言う
乗って、って
おんぶする、って事?
「…いい!いいです、そんなの
歩けるし、」
「ダメだよ
立ってるだけでフラフラしてるもん
遠慮しないで、ね?」
おずおずと相葉さんの背中に身体を預けると、ガシッと立ち上がっておんぶされた
大きな背中
太陽みたい
あったかいな…