第6章 塔
「…勃たないのに?」
「佐伯さん…」
自虐的に笑うこの人は
優しい人だと思う
シャワーを終えた後、自分より先に先ず俺にバスローブを着せてくれるあたり
優しい人に違いないと思うんだ
10分前のアラームが鳴り
佐伯さんがベッドから出て行く
シャツのボタンを止めながら
彼の後ろ姿を何となく眺めていた
「似合うね、スーツ」
「そうか?」
「いつも思ってた。
佐伯さん背も高いしカッコイイから、」
「嬉しい事言うね
カズはスーツは着ないのか?」
「着ないよ
着る機会ないもん」
売り専ボーイだからね、って
俺も自虐的に笑った
「送ろうか?」
「ううん、大丈夫
また呼んでね、佐伯さん」
「あぁ。今度はもう少しセーブするよ」
そうしてくれると俺も助かるよ
心の内が顔に出ていたのか、佐伯さんは苦笑いをしながら
俺の頭をポンポンと撫でて、ホテルの部屋のドアを閉めた
直ぐに迎えのワン切りをして
ヨタヨタとエレベーターまで歩く
しゃきっとしろ
“疲レル事ヲシテキタ姿”を
見られたくないだろう?
迎えの車の中で横になったら
少しは回復してくれよ、俺の体力さん
柄にも無く楽しみにしてたバッティングセンターに行けるんだからさ
これから相葉さんに
会えるんだからさ