第5章 運命の輪
『相葉!何ボサッとしてんだ!』
『すみません!』
『ヤル気無ぇなら厨房から外れろ!』
『…っ、すみません…!』
はぁ… 今日は散々だった
気付くとカズくんのことばっかり考えちゃって
頭ん中がふわふわして夢の中にいるみたいで
昼休憩を終えた後もなんだか集中出来なくて
一日中怒鳴られっぱなしだった
「切り替えなきゃな」
スマホの画面を開いて翔ちゃんにメッセージを送る
“よかったら今日うちで飲まない?”
ビールのスタンプも添えておこう
“折角だから風間も強制連行するよ
酒のアテ、期待してまーす♥”
赤いハートなんか付けちゃって
よし、ここはシェフの実力見せてやろうじゃん
近所のスーパーに寄り、材料を買い込んだ
プライベートで誰かの為に作る料理も久しぶりだ
いつかカズくんに食べてもらえる日が来るかな、なんて
またカズくんの事ばっかり…
「ダメだ、こんなんじゃ」
邪念を振り払うようにして車に乗り込んだ
家まであと5分、というところで信号待ちをしていると
右折車線に一台の車が停まった
「おおっ…」
運転席の男が助手席に覆い被さるようにして…キス、してる
最近の若者は節操無いなぁなんて思いつつ
興味本位でチラチラとその様子を盗み見た
「…マジ?」
助手席に座っていたのは紛れもなく…
男、だった