第2章 愚者
「最高だったよカズ
立てるかい? シャワー、浴びよう」
「…藤堂さん先に浴びてきて?
ココ、キレイにしないと」
窓硝子に飛び散った白濁
大した量でもないけど
出させて
自分も出したら、終わり。
一回戦で済ませてくれるのは有り難い話だ
合わせるだけのキスをすると
その手がふわりと俺の頬を包んだ
「先に行ってるよ。
それから…この間の返事は焦らなくていいから」
「…うん、」
シャワーに向かう藤堂さんの背中を見送ると
深い溜息をついた
普通に考えたら悪い話じゃない
若い方が有利なこの世界
あと数日で24歳を迎える俺にとっては
いつまでもこの仕事を続けられる保証なんてどこにもないから
『…愛人契約?』
『あぁ。考えてみてくれないか?』
藤堂さんの事は嫌いじゃない
でもね
それじゃダメなんだよ
俺は
死ぬまで自分を蔑み続けなきゃいけない
あの時決めた事なんだ
貴方は15歳という若さでこの世を去った
俺のせいで
俺が貴方の人生を奪ったんだ