第2章 愚者
テーブルの上に置かれた封筒の中身は
指名料と120分ぶんのコース料金、エリア内の交通費がピッタリ入っている
それをズボンのポケットに捩じ込むと
落ちていたガウンを拾ってバスルームへと向かった
通帳に増えていく数字は俺の懺悔の証だ
本当はそんなモノで償いなんて出来る訳もないんだけど…
「じゃあ…また」
部屋のドアがパタン、と閉まると事務所にワン切りをする
仕事を終えたから迎えに来てくれ、という合図だ
何事もなかった風を装ってホテルを後にする
エレベーターがグングン降りて行くのはまるで
自分が何処かへ堕ちて行くかのような錯覚を覚えた
バンに乗り込むと無言で運転手に封筒を渡す
「お疲れさん。
次はこの先のファミレスかい?」
「うん。宜しく」
そしてまた車は走り出す
誰もいない車内で一人
雨に濡れた窓越しに、流れる東京の街並みを眺めていた