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デリバリー【気象系BL】

第2章 愚者










「時間通りだね」

「遅れるわけ無いでしょ?
…逢いたかったよ、藤堂さん」


部屋に入って直ぐに抱擁を交わす
甘いムスクの香りに酔いそうだ


「嬉しい事を言うね
私も逢いたかったよ」


紳士を装うこの人は最初からがっついたりしない
だけど
俺を見つめる瞳は期待の色に満ちている


「シャワー浴びておいで」

「…うん」


名残り惜しそうにゆっくりと腕を解いて
バスルームへと向かった


特に何も思わない
男に抱かれる事も
男を抱く事も
女を抱く事でさえ

だけど女は少々面倒くさい
一から十までを知ろうとするから
その点男はラクだ
性欲さえ満たしてやれば良いんだから
俺が【U】のボーイをしてる理由はただそれだけ

買った時間の間だけ
俺の名を呼びながら
俺を求めてくれたらそれでいい







「わ… 豪華なディナー」


高級な食べ物は正直、得意じゃない
決まって腹を壊すから…


「カズの為に用意したんだよ」

「ありがとう、藤堂さん」


口の中に入れれば蕩けそうな肉を次々と口に運ぶ
そんな俺を見て、藤堂さんは満足そうに微笑うんだ


「ここから見える夜景は格別なんだよ
食事を終えたら一緒に見よう」

「ホントに? でも今夜は雨だって言ってた。
嫌だな…」

「カズは雨が嫌い?」

「雨がっていうか6月が嫌い。
天気が変わりやすいし、湿気でムシムシする日が多いでしょ?」



――― 違う、そうじゃない ―――



「雨露に濡れる紫陽花は綺麗だけどね?
そうか。カズは6月が嫌いか」






嫌いだ

俺が生まれた6月なんか
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