第2章 愚者
好かれて嫌な気はしないけどさ
好き好きオーラが強いんだよ
前からそんな感じだったけど絡んでからは尚更だ
あの日も客と別れてから
『カズさんの事本気で好きになっちゃいそう』
なんて言ってたっけ
悪いけど俺はリアルでもノンケなんだよ
オールプレイが可能だから誰もそうは思ってないだろうけどね…
サラリーマンだって仕事で選り好みしてらんないでしょ?
同じだよ
ビジネスはシビアだ
アレもコレも出来ませんじゃいつかは切って捨てられる
最初は『初々しい』とか『ノンケっぽくてイイ』なんて言われてても
次第に不満を覚えて指名替えされんのは目に見えてる
男の性なら嫌って程知り尽くしてるだろう
挿れてナンボ
出してナンボ、だ
『本当にノンケなのか?』
『ノンケなのに何故こんな仕事をしてるんだ?』
『多額の借金でも抱えてるのか?』
客に散々聞かれたけど
俺はゲイでもバイでもなけりゃ、借金も無い
プロフに嘘は書いてない
源氏名さえ本名だしね
逆に実生活の方が偽りだらけだ
今の俺の姿を知ってる奴等の誰が想像できるだろうか
別に辛くなんてない
不幸でもない
だけど
昼の光に
夜の闇の深さが分かるものか