第2章 愚者
「コウタ、ユウト、リョウスケ、カズ
そろそろ出発するぞ」
イヤホンをしてたってちゃんと聞こえてる
気怠そうに席を立つ若い兄ちゃん達の後ろを付いて裏口に向かった
「「「お稼ぎなさーい」」」
『行ってらっしゃい』に代わる言葉を受けながら黒いバンへと乗り込む
数百メートルの所でコウタという金髪の兄ちゃんを降ろすと、そのすぐ先でまた車のドアが開いた
「あっ、カズさん!」
車に乗り込んで直ぐに俺を見付けて
満面の笑顔で寄ってくる、犬みたいな奴
「その節はどうも」
「えー、その言い方他人行儀やないですか!」
「他人やろがい」
「またまたぁ。そんなことおまへんがな(笑)」
わざとらしい関西弁で大声で喋るから
ユウトという男が顔をしかめた
次のホテルの前でユウトとリョウスケが降りると
後部座席には二人しかいないのにコイツは俺の真横に座り直した
「近ぇよ、ダイゴ」
「だってカズさんの事好きやねんもん」
屈託のない笑顔を向けてくるけど
仕事で1回絡んだくらいで何言ってんだと呆れる
つい先日の話だ
ダイゴの客から指名をもらった
内容は3Pコースの鑑賞タイプ
俺に攻められるダイゴを客が鑑賞するというものだった
「実はあの日、相手は俺が選んでいいってお客さんに言われて。
それでカズさんを指名させてもらったんですよ?」
「…あっそ。」
一本目の客との待ち合わせの高級ホテル前
期待に満ちたダイゴの視線を背中に受けながら車を降りた