第15章 デリバリー
「…合格だって、オーナーが、」
「えっ!じゃあ、」
「正社員に…なれるみたい」
「ホントにっ!?」
ホストを辞める時、稼ぎ頭が居なくなるとゴネたチーフを宥めてくれたのは智也さんだった
古くからの友人がケーキ屋のオーナーをしているからそこはどうだ、と
カズくんに就職先を斡旋してくれた
レジのアルバイトから始めて、翌年の春には製菓の専門学校へ
学校とアルバイトを両立していた
卒業してからはパティシエ見習いとして。
手先の起用さと繊細さが功を奏して、カズくんはどんどん腕を上げていった
「智也さんもきっと喜ぶね」
「うんっ」
カズくんの事を弟の様に可愛がってくれてた智也さんに、いつかきちんとお礼を言いたいって思ってたんだ
「美味いもん作って食わせろって言われるだろうね」
「カズくんの作ったものならなんだって美味しい、って食べてくれるよ」
妬いちゃうなぁ、って言ったら
何言ってんの。ってカズくんが笑った
「いいの!
俺には専用の甘ーいスィーツがあるから!」
目の前の美味しそうな唇にチュッと吸い付く
「んっ…」
ほら。こんなにも溶けそうに甘い。