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デリバリー【気象系BL】

第14章 皇帝






「カズくんっ…!」


門から出てきた俺を見付けて駆け寄って来てくれたまーくんは今にも泣きそうな顔をしていて


「大丈夫」


心配要らないよ、って頷いてみせた





母さんは、ホントは知ってたんだ
俺が記憶を失くしたフリをしている事も
…兄さんが生きてる事も。

初めはもちろん知らなかった筈だ
だけど途中でそれを知ってからも尚
俺の芝居に乗っかったままだった


あの後
よろよろと歩いてリビングを出た母さんが戻って来た時には
手に白い封筒が握られていた




『これは…?』


『…智からの…絶縁状よ……』




消印の無い、真っ白な封筒




『…どこにあったの…?』


『あの絵の、額縁の裏に…』




自分の作品に手を加えられた事がどうしても許せなかったという事

許せなくても、母さんの事は嫌いになったわけじゃないという事

もう戻るつもりは無いという事

自分の事は探さないで欲しいという事

それから、




『“和の事を宜しくお願いします”…』




兄さん
兄さんは最後まで俺の事を気に掛けてくれてたんだね
頼りない弟でホント…ごめんね




『…智の最後の頼みまで…聞いてあげなかった…
私は…! 私は智の母親なのに……!』




母さんも充分自分を責めて苦しんだんだ
あれから11年
兄さんだってきっともう許してくれてるよ




『ごめんね、智
ごめんね、和 ―――』




俺たち親子は
随分遠回りをしたみたいだ
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