第14章 皇帝
「兄さんを探すのは辞めにしようと思うんだ」
まーくんの家で珈琲を飲みながら
ポツリ、呟いた
『和に…… 智が生きている事を知られるのが怖かったの…』
俺がいつか、自分は本当は和也なんだと言い出すんじゃないかと
母さんは常にビクビクしていたんだろう
執拗な電話も、メールも
“智”と呼び過ぎるのも
全部理由がわかった気がした
「いいの…? 後悔しない…?」
「しないよ」
兄さんは自らの意思で俺たち家族の元を離れて行ったんだ
「きっと今頃何処かで幸せに暮してるよ
…好きな絵でも描いてさ」
海の魚みたいに自由な世界を泳ぎ回っていてくれたらいい、そう思った
「じゃあ、カズくんもお兄さんに負けない位幸せにならなきゃ」
「俺も…?」
「そう。
俺と…幸せになってくれる…?」
「まーくん、」
「カズくんを幸せにしたいんだよ」
「…凄く嬉しいよ。でも、」
俺にはまだやらなきゃならない事があるんだ