第14章 皇帝
「こうなったら風間も巻き込んでやる。
人探しするなら一人でも人員が多い方がいいだろ?
あ。迷惑だなんて思うなよ?
俺ら“友達”なんだからさ」
トモダチ。
友達ってこんなにも温かいんだって
この歳になって初めて知った
「あり、がと…翔くん」
「礼を言うならお兄さんが見付かった後な」
「うん…」
この人達なら
本当に兄さんを探し出せそうな気がした
何故だか分からないけど
そんな気がするんだよ ―――
「ホントに大丈夫…?」
自分で決めた事だけど
やっぱり怖くて
角を曲がればもうすぐそこに実家があるのに、足が鉛のように重たくて
「俺も一緒に行くよ」
「…大丈夫。一人で行ってくるよ」
母さんにあの日の記憶を全て明かすと決めた
心配してくれたまーくんが家の近くまで付いてきてくれたけど
これは俺のケジメだから
俺がやらなきゃならないから
『大野…… 智…』
医者に名前を聞かれてそう答えた時
母さんは俺を抱きしめて、泣いた
壊れたステレオのように
何度も
何度も
兄さんの名前を呼びながら
“本当は自分は和也なんだ”と伝えたら
母さんはどうなってしまうのか
鼻で笑われて取り付く島もないかも知れない
発狂して暴れ出すかも知れない
予測の付かない反応さながら
真実を伝えた瞬間から
何処に居ようが 何をしようが
生きようが 死のうが
母さんの関心が今後俺に向く事は無いと
現実として突き付けられる事が…怖かったんだ