第12章 星
「兄さんっ…!」
思い切り叫んだ
でも、
「はぁっ… はあっ… 夢……?」
「カズくん…? どうした…?」
そこは海じゃなくベッドの上で
そうか、俺は夢を見てたんだ
「お兄さんの夢、見たの?」
サイドテーブルの照明を点けて
まーくんが俺の顔を心配そうに覗き込んだ
「まーくんっ…」
今のは、夢なんだよね…?
ヤケにリアルだった
こっちが本物の記憶なんじゃないだろうかと思わせる程に
「あの日のこと、夢に見た…」
「うん、」
「兄さんが、海にっ…」
「うん、」
「海に飛び込んで… 自殺、を…
レイプじゃなかった
俺を殴ったヤンキー達も出てこなかった…
兄さんは、自ら…」
「カズくん、」
とにかく今は落ち着こう、って
まーくんが俺を抱きしめてくれて
夢なのか記憶の断片なのかはまだわからないから、って
だけど確かに
あの日の少し前に、兄さんは中学生じゃ到底取る事が出来ない賞を取った
喜ぶ家族を他所に
兄さん一人だけが浮かない顔をしていた
受賞したその作品の写真をずっと眺めていたんだ
舞い上がっていたせいか俺は直ぐには気が付かなかった
青の色が、兄さんの色じゃない事に
授賞式の日、学生服を着た兄さんの横に飾られた絵に感じた違和感はこれだったんだ