第12章 星
『俺の描く空が…よっぽど気に入らなかったんだろうね』
そうか
受賞したあの絵を見た時に感じた違和感はソレだったんだ
『カズ…俺の空の青はね、海の青なんだよ』
同じ青い色をしていても
空はどこまでも高く続き
海はどこまでも深く続いている
『鳥籠の中の青い鳥が幸せを求めて大空へ羽ばたくなら…
水槽の中の青い魚は、自由を求めて海へ還ってもいいだろ…?』
『兄さん…?』
あぁ…個展で見たあの青い鳥の絵は
空が恋しいと泣くばかりではなかった
その先の物語は
兄さんの中で完結していたんだ
『許して、ほしい…、』
『兄さん…!』
『お前を守ってやれなくて…
弱い兄貴でごめんな…』
『兄さん…! 兄さんてば…!』
『カズ…』
『待って…!お願いだから…! 兄さ…!』
――― プーッ プーッ ―――
そこで電話は途絶えて
そして
その少し後に
燈台の方から
何かが海に飛び込むような音が、聞こえたんだ