第11章 恋人
「ホントの誕生日を祝ってもらえたの、10年以上ぶりなんだ…
兄さんが死んでから…俺の誕生日はずっと11月26日だったから、」
それがどれだけ辛いことだったか
想像するだけで胸が苦しい
「これからは毎年一緒に祝おうね」
「毎年…?」
「そう。毎年。」
『ダメ?』って聞いたら
『そんなことないっ…!』って首をブンブン横に振るから
『じゃあ約束ね』って指切りげんまんをした
ケーキを数秒電子レンジにかけて
常温の硬さに戻してから、生クリームの代わりにバニラのアイスクリームを添える
「美味しい…!」
「喜んでもらえてよかった」
「俺、こんなに幸せでいいのかな…」
ギュッと唇を噛むカズくんは
まだ幸せになる事への罪悪感があるようで
「良いんだよ?
良いに決まってる。
お兄さんもきっと喜んでくれてるよ
俺と一緒に幸せになろうね」
子供に言い聞かせるように優しく言葉をかければ、頑ななカズくんの心がゆっくりと溶けていくようで
大丈夫
きっと大丈夫だ
俺がいる限り
もう悪魔の囁きなんかに惑わさせたりしない
させるもんか
絶対に。