第10章 審判
何かあったら電話してこい、って言ったのは智也さんの方なのに
事あるごとに呼び出しがかかり、決まってスウィーツを食べに連れて行かれた
相変わらず年の離れた兄弟の設定は続いていて、小芝居なんかもしながらカフェやらなんやらを週イチのペースで渡り歩く
『しょーがねぇなあ、カズは』
“仕方なく弟に付き合ってやってる感”を出しながらも目の前のスウィーツに口元を緩める智也さんは
見た目とのギャップがあり過ぎて、俺も思わず…
『笑ったな?』
『…っ、笑ってマセン…』
『笑ったよな? 今、確かに笑ったよな?』
『………笑いマシタ、』
『なんだよカズ、笑えんじゃん』
フッと頬を緩めて、目を細めて微笑む
きっとスウィーツを食べることだけが目的じゃないんだろう
なのに何もしてこない
何も聞いてこない
…不思議な人だと思った
『階段屋さんって儲かるの?』
『ブフォッ!』
だって身に着けてる物も持ち物もみんな高そうだし
車なんて高級外車でしょ
『まぁな…』
『ふぅん。
でも階段屋なんて聞いたことない』
『世の中にはいろんな職業があんだよ』
智也さんは言葉を濁したけど、その後俺はネットで調べて
智也さんの会社が本当は階段屋じゃなくて
デリバリーヘルスとデリバリーホストの会社なんだと知った