第10章 審判
『クレープ一口食った時さ
美味しい!けど甘い!って思っただろ?
そーゆーの、感じられるうちはさ
まだオマエの此処が生きたがってんだよ』
トモさんが自分の胸をトントン、と叩く
生きたがってる…?
俺の、心が…?
『何があったか知らないけどさ
あんなやり方は賛成出来ないね』
トモさんはまだ半分以上残っている俺のクレープをヒョイと取り上げて
それをペロッと平らげた
来た道を戻り、夕方になる前には元居た待ち合わせ場所に辿り着いた
本当に、ただ、クレープを食べただけ。
何にもされなかった
『あんなサイト、二度と利用すんなよ?』
『…っ、』
『返事は?』
『…はい、』
『よし。
イイコだな、カズは』
またワシャワシャと頭を撫でられた
『何かあったら電話しな』
そう言って渡された一枚の名刺
“Office TOKIO Stairway to Heaven
代表取締役社長 長瀬 智也”
『ナガセ、トモヤさん…』
兄さんと同じ“智”と
俺と同じ“也”で、“智也”
『凄いね、社長さんなんだ。なんの会社?』
『階段作ってんだよ』
『階段?』
『そう。天国への階段。』
これが
8年前の、俺と智也さんの出会いだった