第10章 審判
『新しい階段作ってみようかと思ってさ。
あのサイトを見てたのはたまたまだよ
どのくらい需要があるのか調査してただけ』
智也さんが今までに作った天国への階段は二つ
男が女と登るものと
女が男と登るもの
新しく作ろうとした三つ目の階段は
男が男と登るものだった
『ねぇ、なんで今の会社起そうと思ったの?』
そう疑問をぶつけた俺に
『犯罪を減らす為。
そう言ったら聞こえがいいだろうけどな
世の中の需要と供給に従事してるだけだよ』
貴方はそう言って遠くを見つめたよね
その瞳がやけに哀しげだったのを今でも覚えてる
だけど
この時はまだ知らなかったんだ
智也さんにも辛い過去があったという事を…
智也さんとはそんな感じの関係が1年続いた
その間も悪魔の声は聞こえてて、時々発作を起こすから
そうなった時の為にと買い与えられた携帯は、ボタン一つで智也さんと繋がれるようになっていた
智也さんに
“大丈夫だ、カズ”
“カズは何も悪くない”
そう言われると、不思議と発作が落ち着いた
そのうち俺も智也さんの役に立ちたいと思うようになった
ちょうど3本目の階段を作る為の準備中で、従業員の採用にも手こずっている時だった
だから反対されるのを承知で言ったんだよ
『智也さん…俺、此処で働きたい』