第6章 体育祭
夜中の2時を過ぎた頃
神奈は泣き疲れ眠り
僕はその髪を
贖罪を願うよう
未だ撫で続けていた
神奈…
無理に個性を使わせなければ良かった
彼女を傷付けるつもりは無かったんだ
きっと
何とかなると思っていたから
今迄に何度も神奈の個性を見てきた
その殆どは無機物に向けられたものだったけれど
失敗する回数は減ってきていたのだ
つい先日も
小学校にあった高価そうな壺を
校長先生に頼まれて復元していたのを目撃した
確か、一週間程前に
廊下を走っていた生徒が割ってしまったんだと聞いた気がする
他にも
出来たばかりの小さな怪我や
壊れてしまった物たちの復元を
彼女は頼まれなくてもやってくれていた
発現したての頃は
神奈が大切にしていたマグカップを
土塊にまで復元してしまったり
コーヒーで汚れたTシャツを
洗濯機から出て来た所まで復元してしまったり
微調整が難しいようだった
今の神奈なら
きっと大丈夫だと思っていた
けれどこと有機物の
命あるものに対してその強大な力を使う時
失敗の許されないプレッシャーを手懐けられる程
彼女はまだ
大人では無かったのだ
そりゃそうだろう
僕等はまだ小学生だ
券売機の手前で認識するものじゃない
きっと大切なもののために自覚するんだ
僕等はまだ
子どもだったんだと
神奈に無茶をさせたこと
神奈を傷つけてしまったこと
僕はどうやって
償えば良いんだろうか
その問いは
子どもの僕には
難題だった