第1章 はじまり
隣の彼も、この個性の強さを理解したらしく
ただこっちをじっと見つめていた
「なるほどねえ…つまりそれは、人間に対しても同様のことができるってことかい」
私は声が出ず、ただ頷いた
『復元するときは、どの位の時間を戻すか意識しなければ発動しなくて…あと、戻し過ぎたり、連続で個性使ったりしたら…うぅ……』
突然顔色が悪くなった私にリカバリーガールは驚き、ふらつく体に手を伸ばしたが
その手より先に別の手が
私を乱暴に支えてくれた
あぁ、そういえばこの人はヒーロー科なんだった…
そう呑気なことを思い出していた
「アホかてめえは。そうなんの分かってんなら実演なんざすんな」
ごもっともだ
…けど
どうしても私は、リカバリーガールにこの個性の有用性と
そして残虐性を、見て感じて欲しかったのだ
『戻す時間によって、使う唾液の量が変わってくるので…やり過ぎると水分不足で倒れたりします…』
「なるほどねえ」
この個性の残虐性は
私が一番理解しているつもりだ
でも私はこっちの、ヒーローと呼ばれる方の道を選んだんだ
『私は、この個性で人を助けたいんです。全てを消してしまうことに萎縮して、助けたい人を助けられないままでは、いたくないんです』
私のこの言葉に
リカバリーガールは決意を固めたように
「…よし、わかったよ
あんたを一人前の、医療人にしてあげよう」
私の人生が
この時始まった