第1章 はじまり
手を舐めた瞬間
男は鋭い反射神経で、反対に私の腕を掴み
そして脚を絡め、背中を手で押さえ
身動き一つ取れなくされてしまった
「てめぇ…どういうつもりだ」
顔が見えない分、先程より恐怖心は薄れ
落ち着いて回答することができる
『わ、私の個性は「復元」です。つまり元の状態に戻すことが出来る個性です』
男は疑うように、ただ黙って聞いてくれた
『個性の発動条件が「舐める」とうい行為で、さっき突然あんなことを…』
「ほおー」
リカバリーガールが珍しそうな声を出す
それもそうだ、「治癒系」の個性は
持って生まれただけで勝ち組と言われる
そんな稀有なものだ
上に乗った彼は自身の舐められた手を確かめるように動かしてみせた
「…」
リカバリーガールは黙っている彼を見て
その個性の効果を測った
「その様子だと、もう痺れはないんだね」
「…」
彼は少し不服そうな顔をしながら
私の拘束を解いていった