第12章 再起
猫の鳴き声が周囲を取り巻く。
寄せ木造りのフロアには柔らかなカーペットが落書きを落とすように何枚も敷かれ、その上で休む白い毛並みの子や、キャットタワーによじ登る斑柄の子、ソファーに腰掛ける私達の膝の上で喉を鳴らすモフモフした子。
幸せが煮詰められたこの空間、猫カフェに、一人だけ似つかわしくない表情をした男が隣に座る。
『…ば、爆豪…大丈夫……?』
「あ“!?」
いつものキレ顔をした爆豪は、膝上に3匹、頭上に1匹、両肩に1匹ずつ、と…とにかくたくさんの猫達が彼にくっつき喉を鳴らしている。とても気持ちが良さそうだ…。
重くはないだろうか、身動きが取れなくて大丈夫だろうか。そんな心配から声を掛けたものの、彼が弱音を吐く筈もなく、吊り上がった目尻をより高々と上げて返事をされた。
そもそも、どうして二人で猫カフェに来ることになったのか。
その経緯は至ってシンプルで、退院直後、爆豪に誘われたからだった。