第11章 償い
花が咲いた
遅咲きの花だった
夏の陽射しも
秋の木枯らしも
積雪の中でさえ
ただじっと、耐え忍んできた
根が腐り
葉が落ち
茎がしぼれようと
その身体に水を流し続けてきた
やがて陽光は少年の誘導灯となり
太陽は生まれ持ったその力で自身を焦がし続けた
誰もが他が為にと足掻き、苦しみ、地を這い続け
時間は無慈悲に流れ続けた
二つの使命は二人を狂わせ
ただの友達でもない
ましてや家族でも
それ以上でも、それ以下でもない
何でもあり、何でもない
周囲の手が加えられ、ただ歪な糸が二人を結ぶ
ただの友達でいられたら
ただの家族でいられたら
ただのー…
何にも変え難い幸福が、その先には約束されていたのかも知れない
きっとそれは、平和そのもので、普通そのもので、退屈で、
平穏そのものだったに違いない
ただ運命だけが、二人をそうさせてはくれなかっただけの話であって
そして二人も、そんな退屈を享受する気はさらさらなかっただけの話だ
選んだ道も、選ばされた道も、そして最初から決められていた道も
どれもが荒れ果て、その小さな身体で歩くには辛く厳しいものばかりだった
だけどそこでは、ひと時たりとも孤独ではなかった
苦しくとも奇跡だった、好運だった
辛くとも悔しくとも、強くあろうとしていられた
何かを望むことができ
何かを為せないことに踠くことが幸いだった
その一瞬一瞬が、幸いそのものだった
他が為にと、そう望む者達が
幸いを教えてくれたから
来る青嵐は眼前に
どこまでも吹き荒む荒野を歩く
少年少女は、やっとの思いで狂い咲く