第10章 白紙
爆豪に引きずられて辿り着いた先は、やはり先程まで居た翔の病室で
静かに寝息を立てる彼の前にずかずかと立ち並ぶ
「オラ、はよやれや」
『アンタねえ……』
この男は先程までの工程を全て忘れ去ったのか?
”出来ない”ってんでしょうが
すると爆豪はあろうことか翔の身体を揺すり始め
「おいコラ、起きろテメエ」と彼の頬をぺちぺちと叩いた
『ちょっ!!ホント何やってんのアンタ!!!』
「技術云々なら仕方ねえ。だが気持ちの問題ってんなら、さっさとやっちまえば良いんだよ」
咄嗟に静止に入るがもう遅く
「ん…」と小さな声と共に
閉ざされた翔の瞳が、ゆっくりと開かれる
『っ…!』
ゆっくりとこちらに向けられた瞳に
神奈はたじろいだ
「お目覚めかァ」
そう、悪役面で出迎える爆豪
「……神奈…」
細々とした声に、神奈はまた瞳が滲む
『………翔……ッ』
翔は動く方の腕を引きずるように上げ
神奈の頬を伝う涙の筋を優しく拭い、目を細める
「…あぁ、やっと……ちゃんと話せる」