第9章 再会
要は【割に合わなくなった】から
凪山神奈を手に入れるにあたり、翔の存在価値は非常に高かった
今後を都合よく進めるための潤滑油として最適だった
スパイを腹に抱えてもお釣りが来ていた
最悪の事態になったとしても
私の力でなんとでもなるものだった
「返す前に、もう一仕事してもらおう」
そう言うや否や、黒霧の胎へ刺したものと同じものを
翔に突き立てる
「っ……」
意識の朦朧とする翔が小さく唸り声を上げる
同時に上空へ大量の水が生じる
「彼の個性も魅力的ではあったんだ。少々扱い辛そうだけどね」
オール・フォー・ワンは翔を抱え盾にし、オールマイトの動きを制限する
水はそのまま落下し、爆豪と神奈の身体を巻き込んで
黒霧のワープホールへ向かい流れる
「ックソが…!」
生じた余裕が仇となり、二人の足元を掬う
黒い靄目掛けて流される身体に、その勢いに抗えず諦念の陰が指す