第3章 命令
『え、でもあいつ練習場に来いって…』
“あいつ”という単語に
相手が女子ではないんだろうと憶測し
少しピクリと反応してしまう
「来いって…何させるつもりなんだよ、そいつ」
『さぁ…?あ、でも私の個性を使いたいみたいだから、治癒が必要なんじゃないかな?』
なんか大変だよね、ヒーロー科は
そう呟くように言った台詞に
隠せない程の苛立ちを覚え
眉をひそめてしまった
そんな心操の姿に神奈は気付くことはなく
そのまま言葉をつなげていく
『練習場行かなかったらクラスまで押し寄せて来そう…』
苦笑いを浮かべる神奈に
心操は楽しくなくなってき
それ以上言葉を紡がれない様に
話を遮った
「そんな奴がヒーロー科なんて、がっかりだな。
神奈、そいつの為にお前の凄え個性使う必要ねえよ。
クラスまで押し寄せて来るようなら、俺が追い返してやるから」
真剣な眼差しでそう説得する心操に
神奈は一瞬たじろぎはしたが
すぐに、これはちゃんと考えて答えないといけないということを悟り
自身の考えを述べる
『そう言って貰えるのは凄く有り難いし、心強いけど。でも、私の個性を、どんな理由であれ必要としてくれる人が居るなら
私は無償で力になりたいの。』
まぁ、毎日は流石に厳しい要求だけどねー
と誤魔化すように笑ってみせた
俺は
なんだか少し負けた気分になったが
俺が何を言っても
彼女が考えを改めることはないだろうと思い
そうか
とこぼすしかなかった