第6章 体育祭
どごっと低い音が鳴った気がした
「っう!」
鳴ったと思ったら
俺は腹を拳で殴られていた
謝ったのに…
『もう知らんっ!!師匠の手伝い行く!!!』
意外と痛い腹を抑え
走り去ろうとする神奈に必死に声を掛ける
「悪かったっつってんだろ!歯止め効かねえぐれえ好きなんだから仕方ねえだろ!!!」
『っ!』
その言葉で神奈は
数メートル離れた所で止まる
戻ってきてくれるのかと
一縷の望みが芽生えた
ゆっくりと髪を靡かせて
こちらを振り返る
『…ばあーか』
「っ…!」
振り向いたその顔は
嬉しさを噛みしめる様な
そんな顔いっぱいの笑顔だった
そのまま彼女は宣言通り行ってしまったが
一人残された俺は
去り際の笑顔と
肌の感触がまだ残ったまま
柄にもなく赤く染まる顔を冷ますように
少し温くなってきたドリンクを瞼に乗せる
「…ズリいのはどっちだよ……くそが」
空に呟くその声は
そのまま風に流された
この一連の行為を
見ていた人物がいただなんて
知らずに…